本研究は、「日本小文典」成立の背景として、16・17世紀ポルトガル語正書法書を縦軸に、同時代のアフリカ・ブラジル・インドにおける(ポルトガル語で書かれた)現地語語学書を横軸に据え、考察を進めるものである。本年度は特に後者について、その全貌の概略を描くことに努力し、その成果の一部をルネサンスセンター主催ポルトガル大使館他後援の国際シンポジウムにおいて下記のテーマで発表した。 (上智大学9月25日)“Linguistic Studies by the Jesuit Mission Press in the Sixteenth and Seventeenth Certuries" 「日本小文典」成立の背景としての「大航海時代の語学書」の性格が(その概略だけでも)全体として見えてきたことは大きな収穫であったと言える。現地語語学書として、アフリカ(コンゴ語・ンドンゴ語)、ブラジル(トゥピ語、カリリ語)、インド(コンカン語、タミル語)のものが残っていることが判ったが、これらの語学書についての研究は、日本国内ではもちろんのこと、国外においても極めて少ないようである。これからは、「日本小文典」に下記1〜3の諸点より光を当てつつ、その内容を検討していきたいと考える。 1.同じ著者による「日本文典」 2.16・17世紀ラテン語・ポルトガル語文法書 3.アフリカ・ブラジル・インド諸語に関する「大航海時代の語学書」
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