当初の目的通りに、「趙志集」の注釈作業を為し終えた。その訳注を天理図書館発行の研究誌「ビブリア」誌上に発表することを許され、前年度の上篇に引き続いて中篇を公にし、下篇も既に印刷中である。さらに「趙志集」の一字索引の作成も終了した。これについては、他に場所を得て発表したい。6年度には、特に「趙志集」の詩集としての構成やその伝来の過程に対して、従来の説を補強する点や、新たに加えうる点を見出すことができた。またこれらの成果は、6年秋に来日した南京大学の周勲初教授に手渡し、同教授を中心に行なわれている中国での『全唐詩』改訂作業の一助としてもらうと共に、教授との詳しい意見交換も行なった。二年間の作業によって、「趙志集」に関する基本的な整理は為し得たと考えている。 なお「唐人送別詩」については園城寺と連絡が取れ、現在寺内に保管されていないために閲覧は許可されなかったものの、そのお世話で写真からのコピーを手に入れることができた。これに基づいて文字を確認するとともに、改めて内容についての詳しい検討を行なっている。やはり昨年度から続けている「佚名唐詩集残巻」の読解作業と合わせて、いずれ機会を見て、訳注を含めた成果の公表を行なってゆきたい。仏教文献や日本での詩注などに引かれた唐詩の逸句の捜輯は、まだ取り立てた成果を見るに至っていないが、元来根気のいる作業であるので、引き続き努力して行く。また、日本に伝来した唐詩人の集の書誌的な検討も、根気よく続けて行くつもりである。
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