本年度(平成5年度)は、鍋島本藩における古文書類を中心に調査を実施した。なお第三回目の調査を残しているが、これまでに終了した文書は、本藩各藩主の伝として『光茂公譜考補地取』・『綱茂公御年譜』・『吉茂公譜』・『宗茂公譜』・『重茂公御年譜』・『斉直公譜地』・『直正公御年譜地取』・『泰国院様御年譜地取』、また周辺資料として『旧藩学校調』(文部省へ提出の原本)・『鳥子御帳』(藩祖の定書)・『武富家家伝記写』(佐賀大財聖堂建設者武富咸亮の伝)・『実松元林家旧記』(本藩鬼丸聖堂儒官の家伝)、その他微細資料数点についてである。特に鍋島治茂の伝『泰国院様御年譜地取』は厚冊39部の詳細なもので、寛政の改革や湯島聖堂再興の時期に当たり、治茂自身も学制改革を推進した関係上、本研究においては資料の宝庫ともいうべきものである。そのうち湯島聖堂再興の祝儀としての献上本の記録については、幕府側の資料として『昌平志』等の調査も実施し、さらに内閣文庫中における実際に献上された漢籍の特定も終了した。これについては現在原稿を作成中であり、3月の最終調査終了後には完成の予定である。なお残された資料としては、本藩主儒官古賀精里・古賀穀堂の記録等があり、これらの終了を待って、本藩における漢学・聖堂の盛衰についての考察をまとめることとしたい。また県立図書館蔵書中明治年間寄贈本の蔵書印調査により、本藩における漢籍の集散について、さらに資料が補強されることとなり、これについても4月以降早い時期にまとめる予定である。現時点での発表分は『芸暉閣經籍志校補』その2(現在印刷中)であり、今後数年にわたって継続発表となる。なお平成3年度調査終了の、鹿島鍋島家にかかわるとされる県立鹿島行動学校収蔵本目録の発表にあたって、現地において再確認作業を実施した。これも本研究の一環である。
|