研究概要 |
Chomsky(1991,1992)で新たに展開されているミニマリスト・アプローチにおいては、束縛理論は従来のS構造に対する適格性条件としてのとらえかたから認知体系とのインターフェイス・レベルであるLFにおける実質的な解釈規則としてとらえることが提案された。また、束縛という概念を同一指標,統率という概念を設定することなく規定しようという試みもなされている。本研究においては、特に、認知体系とのインターフェース・レベルであるLFにおける解釈規則であるという部分に焦点をあげ、Chomsky(1992)では指摘されていない各種の束縛現象についてこのようなアプローチの仕方の妥当性を検討した。 具体的な事例としては、束縛照応を含む削除現象に関して、なぜある構造のもとでは、削除部分において束縛違反が顕在化しまた他の構造においては、束縛違反が消失してしまうのかという問題を考察し、等位構造と他の構造において明確に異なる意味表示(LF)が与えられる必要があり、それに基づいて束縛条件が機能する必要があることを明らかにした。
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