本年度の研究では、まず第一にマラルメ・データベース研究会からマラルメ諸作品のテキスト・データの提供を受け、第二にこれをハイパーカードに読み込むためのプログラムを開発して、実際に大部分のデータの取り込みをおこなった。その際、元々のデータがフランス語表記の使えないコンピュータで単語の検索や統計処理をすることを目的としてつくられているために、われわれが考えているような視覚的効果をもった批評版のテキストにするためには、表記の変更やリファレンスデータの書き換えなど、かなり煩雑な手続きが必要だったが、これによってハイパーテキスト形式でマラルメ作品の批評版をつくるための素材ができあがったことになる。つぎに、これを実際にハイパーテキストとして動作させるためのプログラムの開発に着手した。これには、そもそもハイパーテキスト形式で批評版をつくるということがあたらしい試みであるために、初期構想の段階でかなりの時間と労力がかかったが、現在では構想もまとまり、プログラムも枠組みだけは完成している。それは、ひとつのテキスト断片(主として段落)を一枚のカードとし、そのカードから縦方向の(つまり同じテキストに属する)別のカードを呼び出したり、横方向の(つまり別のテキストに属しながら対応関係をもっている)別のテキストを呼び出したり、さらには比較照合がおこなわれている特殊なカードを呼び出したりするというものである。こうした枠組みを完成させることが本年度の課題であったが、それがいちおうの達成をみたので、来年度はこの枠組みにそって、入力と校訂の具体的な作業をつみあげていけば、年度末には批評版の少なくとも一部は成果として発表できるのではないかと信じている。
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