基礎資料の収集と分析に当てられた平成5年度、それに基づいてフランス文学にあらわれた神経症の表象を研究した平成6年度に続き、今年度は次の3点を中心に研究を進めた。 第一に、神経症の歴史について、集めた資料を解析して、古代から現代にいたるまでの概念の変化を調査し、文章にまとめること。これは研究全体の序論となるべき部分である。また神経症に関する定義や意味の揺らぎについても考察を行う。 第二に、筆者が専攻するフランス近代文学を「レアリスムの時代」「ナチュラリスムの時代」「世紀末から20世紀初頭の文学」の大別して3つの時代に分類し、それぞれの代表的な作家が、いずれも神経症を重要な主題として作品の中に結実した様子を解明すること。バルザック、フローベール、ゾラ、ユイスマンス、プル-ストなどが主要な対象である。 第三に、絵画や造形芸術の中に神経症の表象を見つけること。いぜん執筆したジェリコ-論、ムンク論に加え、シャルコ-と図像について研究を行う。 以上の三点は、いずれもある程度の成果を上げることができた。とりわけ第二点に関しては、フローベールとプル-ストについて、大きな成果を上げたように思う。第一の部分は冊子体の研究成果報告にまとめる。全体の成果については、現在印刷中の著書として発表する予定である。
|