ドイツ中世の英雄叙事詩である『ニーベルンゲンの歌』について、語彙と文化史の面から研究を進めた。既にフロッピーに入力してあるニーベルンゲンリートの全語彙に、語義を追加入力した。これまでに名詞の語義はすべて入力したが、動詞などについては追加入力して正確を期している。 発表論文のうち、「刀礼」(swertleite)については、ジーフリト自身の刀礼と、ジーフリトが見た刀礼とを言語と文化史的な側面から比較考察した。 「蜜酒」(met)についての論文では、ヨーロッパの古典古代から、ドイツ中世の代表的な叙事詩とニーベルンゲンリートに現れている蜜酒を、原文を織り込みながら、主として文化史的な側面から考察し、ギリシャ・ラテンからゲルマンの神々やジーフリトが好んで飲んだというmetについてまとめた。 ニーベルンゲンリートの名詞については、アルファベート順に全語彙を並べ、各語の出現頻度、初出詩節番号、文法上の性と変化の種類、及び語義を記した『Glossar(小辞典)』を作成した。これは、中世語が名詞の頭文字を大文字書きにしていないために読解の際の難渋箇所となっているのを解消し、読み易くするために役立つものと考える。内容的には、文化史的な側面の記載がまだ十分ではないが、収集してある多くの資料を用いて完璧を期す考えである。また、全品詞について、この種の小辞典を作成する。この度、発表した『ニーベルンゲンの歌』の名詞の『Glossar(小辞典)』(全74頁)は、当シリーズの第1号と位置づけられる。
|