本研究では、統一前後における東西両ドイツの知識人の発言を対象に、ドイツの政治文化の現状を調査することを目的として、1)統一以前の東西ドイツにおける「国民的アイデンティティ」に関する論議と統一後の変化、2)統一の過程における、統一の是非や目標、実現の様態をめぐる論議と東西の見方の違い、3)統一後の東西交流の問題点や、旧東独で表面化した「過去の克服」の問題、という3つのテーマについて分析を行なう計画を立てていた。このうち1)と2)については、幅広く資料を収集してコンピューター入力し、ディスクルス分析を行なったが、財政的制約から、資料の収集が思うように進まなかったこともあり、完全な資料的基盤を整備するには至らなかった。とはいえ、既存の新聞・雑誌資料も活用することにより、ドイツ統一がかならずしも「国民国家」原理による政治的統一として推進されたのではなく、むしろ経済の論理による統合が進められ、それに対して、ハーバマスが「ドイツ・マルク・ナショナリズム」と批判する状況が生じていたことを明らかにすることができた。3)は、当初3年間を予定して申請した際に掲げたテーマで、1年間への削減後も残していたものであるが、やはり時間的・財政的制約から成果を挙げるほどに立ち入った取り組みを行なうことはできなかった。これは今後、ドイツ政治文化の研究を続けていくなかで、発展テーマとして課題の一つとしていきたい。
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