研究課題/領域番号 |
05610422
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水谷 智洋 東京大学, 教育学部, 教授 (10011321)
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研究分担者 |
秋山 学 東京大学, 教養学部, 助手 (80231843)
大貫 隆 東京大学, 教養学部, 助教授 (90138818)
宮本 久雄 東京大学, 教養学部, 教授 (50157682)
今井 知正 東京大学, 教養学部, 教授 (50110284)
山本 巍 東京大学, 教養学部, 教授 (70012515)
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キーワード | 神話 / 季節 / 形而上学 / 観想 / 火 / 贖罪 / 融和 / 典礼 |
研究概要 |
便宜上、研究対象となった古代地中海世界を時代別に「1.古代ギリシア」「2.旧約時代のイスラエル」「3.新約時代の地中海世界」「4.ローマおよび初期ビザンツ時代」という大区分に分割し、各時代ごとに明らかになった「自然理解と宗教観」の全体像を記すことにしたい。まず「1.古代ギリシア」においては、その神話的世界観のなかで、例えば季節の変化は自然界における死と再生の現れとして捉えられていたが、その意識の変遷のうちに「秋」という単語が新たに生まれるなど、使用語彙の上でも変化がみられるようになる(水谷)。また、神話的表徴の世界からまだ十分に脱していなかったプラトンから、その弟子アリストテレスへ移行期において、自然界に対する科学的・実証主義的認識が高まるとともに、形而上学が宗教的な意味をも担うようになり、観想生活が人間にとって最も神的な状態として位置づけられるようになる(山本)。次に「2.旧約時代のイスラエル」では、特に出エジプト期や預言者たちの時代において、「火」の形で神が顕現を果たすという認識が生まれるとともに、歴史を通して神は自己の意志を実現するという神学が展開される(宮本、秋山)。そして「3.新約時代の地中海世界」では、「父なる神のひとり子」であり「人類の救い主」イエス・キリストは自然界のロゴスの受肉体であるというヨハネ神学に代表されるように、贖罪者の到来により神の救済意思が完遂されると同時に人間は自然界とも融和を果たしうるとするキリスト教神学が成立する(大貫)。そして「4.ローマおよび初期ビザンツ時代」にあっては、以上二つのヘレニズム的そしてヘブライズム的な思潮がローマ帝国の中で止揚され、次第に時代はキリスト教中世期に向かい、諸建築物や芸術活動などに見出されるように、典礼行為を通して人間が聖霊を内在させることによって、自然界に対してより高次の文化的対話が試みられるようになる(今井、秋山)。
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