1.近年の景観をめぐる粉争の頻発は、環境の質、環境の視覚的側面=景観の問題に国民の関心が向けられてきたことを意味する。そのことの原因ないし背景としては、総合保養地域整備法(いわゆるリゾート法)施行にともなう開発と、土地高騰→土地の高度利用のための建築物の高層化が主なものであることがわかった。 2.法的には、法律で厳しい規制がかけられている地区と規制の緩い地域が垂直に線引きされていることから、「借景」が破壊されるというゾーニングの問題があることが判明した。景観のまとまり性・一体性の観念が法制度上も追求される必要があるということである。 3.近年の景観行政の特徴として、市町村と国の中間の行政単位である県が景観条例を制定し、景観形成施策を行うというのが顕著である。規制方法は、地区指定を行い、その地区内での一定の行為と、県全域における大規模行為を届出制のもとに置くというのが一般的である。許可制でなく届出制なのは、景観条例の根拠となる法律がないこと、既存法令や市町村の責務との整合性の問題があるとされる。 4.上記のほか、得られた知見を挙げれば、次の諸点である(順不同)。(1)景観保護のために何よりも求められるのはゴルフ場建設と海面埋立てに対する強力な規制である。(2)景観保全法制度のあるべき方向を考える時の重要な観点は、自然・歴史的景観では「保全」が基本で「形成」は副次的である、「創造」概念は濫用さるべきでない、景観保全価値の開発価値に対する優先性が確保さるべきである、景観保全につき主として責任を追うべきは行政・企業であるという責任の所在を明確にする、ことである。(4)景観保全のための施策を展開するためには、自治体に総合的に景観保全をはかる部局を創設することが必要である。
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