1.本研究は、「自主規制協定(Selbstbeschrankungsabkommen)」および「環境保護受託者(Umweltschutzbeauftragte)」を具体的な素材として、ドイツ環境法における協働的環境保護の組織および作用の現代的展開を実証的に検討することによって、その統制法理を析出することを課題とするものであった。 2.上記2つの素材のうち、ドイツの協働的環境保護のためのインフォーマルな規制手法の1つとしての「自主規制協定」については、まず、第2次大戦後の経済法・環境法の分野における具体例を分析し、その実態を明らかにした。そして、これは別名「自己義務づけ的確約」とも呼ばれ、その法的性質は契約とは異なり、機能としては、規制的申し合わせ(Absprachen)に属し、法律回避的合意ないし法律代替的申し合わせとして、法律に基づく法規命令や具体的な命令・禁止を回避することによって、迅速かつ非官僚的な環境保護の実現に資するものとされていること、ただ、国家と経済との協働的手法の1つとしての自主規制協定における経済(企業)の自由意思の法的性格を国家のイニシアティブの存在との関係でいかに考えるかが、その法的統制の面でとくに重要であること、また、手続法上の問題として、利害関係人等に対する確約の内容の公開義務の問題があり、さらに、行政法上の問題とならんでカルテル法上のそれを検討する必要があること、等を明らかにした。 3.もう1つの素材である「環境保護受託者」については、この制度の実態を環境法の各個別領域ごとに分析し、その任務、法的地位、機能等を概観し、とくに企業の自己監視義務の法的性質の検討を行った。 4.本年度は、2つの素材のうち、とくに環境保護受託者については計画を十分遂行することができなかった。今後早急に本年度の研究実施計画を完了する予定である。
|