【日本官僚制組織法制の歴史的展開と今日的課題】 今日の先端的研究成果が示すところによれば、戦前の「官制」システムから戦後の国家行政組織法システムへの移行の中で、日本官僚制はその権力を実質的に温存することに成功し、そのことは、各省官制から各省設置法への引き継ぎという形で、法制的にも裏付けられる(特に、赤木・岡田両氏の研究)。確かに、大臣ではなく省に「所掌業務と権限」を付与している点で、各省設置法の体裁は官制のそれと異なるが、組織法理論の観点からみて実質的改変がなされたとは言えないように思われる。それでは、何が変わったのか。大局的にみて、ひとつは、内閣総理大臣の地位強化を伴った議院内閣制の導入(憲法・内閣法)であり、もうひとつは、アメリカ行政学の発想を取り入れたとされている国家行政組織法の制定である。これらはいずれも主権者たる国民に対する行政(組織)の責任と一体性・総合性を保証すべきはずのものであった。しかしこの点についても、実態としては、設置法が基本的に国家行政組織法に依存することなく制定されたこと、内閣法自身が「主任の大臣」制(割拠性)を支えるものであることが指摘されている。そこで、このような文脈の中から再度重要な検討課題が浮かび上がってくる。それが、国会および総合的行政組織管理機関による行政組織統制の問題である。1983年に成った「組織規制の弾力化」は、一面では戦後官制改革(継承)の総仕上げともいえるが、他面、縦割り的な設置法ではなく、横断的な国家行政組織法の規定を飛躍的に拡充することによって、上のような意味での組織統制を実質化する(法律による行政立法統制)契機ともなり得るのではないか、と思われる。今日改めて、国家行政組織法の存在意識が問い直されなければならない所以である。
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