研究概要 |
I 日本官僚制組織法制の歴史的展開と今日的課題 日本官僚制の組織法制は、戦前の「官制」システムから戦後の国家行政組織法システムへと、その姿を根本的に変えたように見える。内閣総理大臣の地位強化を伴った議員内閣制の導入と能率性原則・横の連絡と「一体性」の重視・単位組織の規格化・行政組織法律主義・総合的な「行政機関」概念の採用などの特色をもった国家行政組織法(昭和23年法律120号)の誕生は、そのような見方を裏付けるものとして捉えることもできよう。しかし、近時の実証的研究は、戦後改革にもかかわらず、日本官僚制は割拠的な性格と共にその権力を実質的に温存することに成功し、それを組織法制自体が支えてきた側面があることを明らかにしている。各省庁設置法が、基本的に国家行政組織法に依存することなく、かつての各省等官制を実質的に引き継ぐ形で制定され、また、内閣法(昭和22年法律第5号)自身が「主任の大臣」による行政事務の「分担管理」制を採用した点にその主たる原因を見ることができる。そこで、これを踏まえて行政組織法の今日的課題を考察すると、国会および総合的組織管理機関による行政組織統制の問題が重要となる。縦割り的な設置法ではなく、横断的な国家行政組織法の規定を飛躍的に拡充するならば,、法律による行政立法統制と組織管理機関による監視とを通じて、行政組織の法的統制を実質化することができるであろう。 II 国家行政組織法の基本的性格に関する考察 そこでさらに、国家行政組織法の性格付け自体についても再検討の必要が生ずる。立法論の前提として、まず現行法の正確な理解が必須である。結論のみ示せば、従来、同法は内閣の統括下にある行政組織に関する「規格法」・「基準法」とされてきたが、さらに同法の行政運営法的性格・行政機関の長の共通権限に関する根拠法的性格・行政立法に対する委任の授権法的性格も認められ、同法は多角的な視点から捉え直さなければならない。
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