国際社会では、冷戦の終焉とともに、新たな国際秩序の必要性が叫ばれている。国際連合も、国際の平和と安全の維持のための新たな役割を求められている。しかし、冷戦期における国際連合の実行と、ポスト冷戦期において国際連合に期待されかつ実現可能な役割とは、大きく異なる可能性がある。とくに最近の湾岸戦争や旧ユ-ゴスラヴィア紛争、ソマリア内戦のように、強制行動と平和維持とが同時に関わる状況が生じている今日、われわれは、この二つの活動の相互関係の検討を通じて、かつ21世紀の国連を中心とした新秩序を見通しつつ、国際連合の平和維持機能の新しい展開のいくつかを重点的に検討することができた。 位田は、とくに第2次対戦後から今日に至る国連の集団安全保障と平和維持活動を全体として把握し直し、その作業の上に立って、冷戦後の国連の活動の特徴とその問題点を明らかにし、集団安全保障の理論枠組と憲章第7章の適用における実際との擦り合わせと解釈の再検討を行なった。また、一般的な「平和」の概念と繋がるところで、国連国際法委員会による国際刑事裁判所規程草案をも検討した。酒井は、1989年以後の平和維持活動の事例の詳細な分析を行ない、伝統的な平和維持活動の諸原則がそれらの中で、(1)同意の欠如、(2)国連の直接の指揮の不明確、(3)権限の拡大、(3)「自衛」の範囲の拡大などの変容を導いていることを立証しようとし、その上で新たな平和維持活動原則の究明を試みた。
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