研究概要 |
本年度(平成6年度)は,複合取引のうち,現在型信用取引として位置づけた割賦販売(割賦購入あっせん,ローン提携販売),ファイナンス・リ-ス,設備信託,介入取引,ファクタリングに関し,昨年度に実施した実態調査と照らした形で,いわゆる抗弁の接続に関する裁判例を横断的に比較・検討し,これを類型的に整理する作業を主として行った。 その結果,現代型信用取引では,複数の取引当事者が環状的に結合してその一部に信用供与が組み込まれている類型であれ,商品が流通される過程に信用供与機関が関与する類型であれ,(イ)そもそも商品の引渡を伴わない取引(空リ-ス,介入取引など)などにあっては,信用供与者の善意・悪意という主観的用件をも加味して抗弁の接続が否定されていること,他方,(ロ)抗弁の接続が工程されている場合としては,代理関係,虚偽表示などが認定され易いこと,(ハ)その中には,信用供与者とメーカーのないし販売業者とが提携関係にある場合が多いことなどの特色があり,(ハ)裁判例は,これらの事情を総合的な観点から捉えたうえで,抗弁の接続いかんを判断している,と纏めることができた。また,(ニ)抗弁の接続を認める法的根拠としては,信義則の適用が最も適切であるとの結論に到達した。これより,(ホ)今後,現代型信用取引の複合取引において,信用受領者が抗弁の接続を主張するときは,信義則を適用するための要件として上記(イ)〜(ハ)の諸事情に照らした処理が必要である,との知見を本研究者は得るに至った。
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