1 会社法体系を構成する理論モデルとして、伝統的会社法理論は等質株主結合型モデルを用いていること、しかし、それ以外に異質株主結合型モデルを用いて会社法体系を構想することが可能であり、しかもその異質株主結合型モデルによる会社法は、現行会社法に比して、柔軟な法構造をもったものになることを明らかにした研究成果は、昨年(平成5年)秋の私法学会のワークショップ「株式会社法の柔構造化」において報告した。 2 異質株主結合型の会社法が、等質株主結合型の現行会社法とはどのように異なっているかについて、まず、【.encircled1.】論文名「監査役制度と会社支配理論」は、異質株主結合型モデルによるとき、監査役の実質的独立性を確保できる監査制度を構想できることを明らかにしたものである。次に、【.encircled2.】論文名「株主総会の活性化と会社法理論-伝統的な活性化論に対する問題提起-]は、異質株主結合型モデルによるとき、株主総会の活性化は一般株主より、むしろ支配株主=経営者の問題であることを明らかにしたものである。 3 この異質株主結合型の会社法理論によるとき、等質株主結合型モデルにたつアメリカ、ドイツ、日本の現行会社法における会社支配変動およびコンツェルン規制は、どのように評価されることになるのか、その検討を現在行いつつある。なお、その作業のなかで当初の研究計画の段階では明確に意識していなかったが、いわゆる法と経済学派の用いる契約型モデルも理論モデルとして加えて比較考察すべき必要性を痛感したため、研究対象をやや拡大し、この契約型モデルについても検討を加えることにした。そのうえで、これら三つの理論モデルが株式会社の所有、支配、経営の関係をどのようにとらえているか(各モデルとバーリー=ミーンズの理論の関係)を比較分析している。こうした研究拡大は、当初の研究目的の達成をより確実なものにすると考える。すなわち、各モデル毎に会社支配の法的処理の仕方がかなり異なっていること、また異質株結合約型モデルがもっともきめ細かな会社支配規制を可能とすること、を論証できる見通しがつきつつある。 この研究成果は、論文名「会社法におけるモデル分析と会社支配の法的処理」として、本年5月に脱稿し、法政研究61巻1号(本年7月刊行予定)に掲載する予定である。
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