平成5年度には、アメリカの裁判所附置の離婚調停・監護調停の制度運営の実情や課題をかなり詳しく調査研究した。裁判所附置の調停プログラムが独自に行っている実態調査、とくにカリフォーニア州での家庭裁判所サービス局の全州的調査、調停運営の実務基準、調停と裁判手続との相互関係、調停の費用、調停者の資格や養成、調停の申立資格、参加者、調停対象事項、秘密保持の原則等の諸点からアメリカの裁判所での調停サービスの実態・工夫・課題をかなり明らかにすることができた。たとえば、裁判所附置の公的調停では、調停運営の実務基準が策定され、密室での調停運営の公正化が図られていた。調停者については行動科学の修士号、一定の実務経験や研修を要求し、資格要件を厳格にする傾向が顕著であった。また、調停対象事項は子の問題に限るところが多く、費用も低廉で、低所得の人達の利用が多かった。その結果、裁判所附置の調停での調停前置主義(必要的調停制度)は、これらの利用者への手続誘導機能、訴訟振分機能、紛争の調整機能等を果たしていた。秘密保持の原則も徹底化され、以上の諸点はわが国の家事調停の今後を考えるうえにおいても大変示唆的であった。なお、わが国の家事調停制度の問題点と課題につき、とくに都市部の家裁の調停との比較という観点から、沖縄における家事調停の特色と問題点について実態調査を行った。
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