研究概要 |
1.アメリカおよびカナダの文献を収集して,精神医療の場面におけるインフォームド・コンセントに関わる問題を,同意能力を中心に検討した。また,その研究に基づいて,わが国の精神医療におけるインフォームド・コンセントのあるべき姿について,理論的考察と実際的提言を行った。この中では,同意能力の問題の他に,同意の任意性,同意・説明要件の免除事由,精神病院への入院に関する同意,治療に対する同意,などを取り上げ,最後の治療に対する同意の検討において,精神病患者,特に精神病院入院患者の治療拒否の問題や,薬の隠しのませの問題を扱った。 2.アメリカおよびわが国の判決を中心に,精神医療にかかわる医療従事者・医療機関の民事責任の間題を検討した。 (1)精神障害者による第三者に対する加害行為に関する責任を,アメリカにおいて非入院患者の加害行為に関して医療従事者の第三者保護義務を確立したタラソフ判決とそれ以降の裁判所の動きを検討した。タラソフ判決以降の動きに関しては,披害者の特定性ないし患者の攻撃意思の具体性の要否などについての裁判所の判断の多様性,および医療従事者・医療機関の責任の限定のための法律制定の動きなどを,具体的内容を添えて指摘した。(2)精神病忠者の自殺・自傷行為に対する医療従事者・医療機関の責住の問題を検討した。これに関しては,裁判所が適用する実体的理論における考慮要素(自殺・自傷行為の予測の困難性,開放医療と自殺・自傷行為の予防の関係など)の日米における共通性とともに,陪審制など制度上の違いの反映を指摘した。
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