関西所在の裁判所で、甲山事件はじめ大小の事件の裁判傍聴を行い、手続の様々な段階における被告人の手続からの疎外状況を把握しつつある。その中で、今年度は、逮捕拘留中の取調べが病理を生む大きな原因であることを、実例を通じて確認する作業を続けた。また、これを克服する弁護活動の実情調査等について、理論面の検討を含めて、論文をまとめる作業を行なった。 さらに、この点については、継続研究の必要があり、現在も実務家との学者の研究プロジェクトを続けている。これは、95年6月の刑法学会の分科会で成果をまとめる予定である。 各地で継続する聴覚障害者被告事件を積極的に傍聴するとともに、担当の弁護士、手話通訳者と研究交流会を各傍聴の毎にもつように努めた。裁判所サイドが考えている公正な手続・公正な通訳保障のあり方と、聴覚障害者の側なり手話通訳の側からみたそれとの食い違いがあるか・ないか、実務がどのあたりで落ち着こうとしているのか、見極める段階にある。 外国人事件の傍聴と、事件関係者、弁護士などとの面接・調査などもすすめている。とくに、外国人事件と量刑のありかたを巡り、刑罰の意味を含めた検討作業を実例を通じて進めた。これも、事件が控訴されたので、継続検討中である。 甲府地裁係属の甲府信金女子職員誘拐殺人事件を捜査段階からフォローするとともに、判決公判傍聴を行ない、被告人の防御と適正な量刑のありかたを巡る検討を行なった。
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