研究課題/領域番号 |
05620044
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小林 正弥 千葉大学, 法経学部, 助教授 (60186773)
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研究分担者 |
森田 朗 東京大学, 法学部, 教授 (80134344)
小川 有美 千葉大学, 法経学部, 助手 (70241932)
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キーワード | 中央地方関係 / 北欧 / スウェーデン / ノルウェー / デンマーク / 分権化 / 地方自治 |
研究概要 |
本研究は中央地方関係を中心に、北欧諸国(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク)と日本との行政構造の特徴と変容を比較政治学的方法によって分析することを目的とした。英米型ほど日本と異なった伝統をもたないのに現在の相違の大きい北欧諸国との比較は、行政構造の決定における「政治的」要因の意義をより操作的に示すと考えられた。まず統計的なデータでは、北欧諸国において戦後約30年間に劇的な基礎自治体(コムーン)数の減少が起こっていることが確認された。これは国家機構の枠組みが高度に固定的で市町村の編成も漸変的であった日本とは大きくことなっている。そして北欧では基礎自治体の財政的自律性と社会サービスの高い供給能力が特徴である。これに対して日本は周知のように県レベルの権限が強く、また中央地方政府間関係は相互依存的・混合的である。この日本の構造について、行政の能力の高さ、相互依存関係における地方の影響力を指摘する研究も存在するが、こうした「政治的」中央地方関係と「行政的」地方関係の混合は必ずしも有効性を発揮するばかりでなく、クライエンテリズムや政府間の責任回避の競合を作り出していることがいえる。 このような日本と北欧の地方政府のあり方の違いは、政治史的に分析できる側面が大きかった。すなわち第一に北欧では戦後社会民主主義の一党優位が確立したこと、第二にそれら社会民主主義勢力は戦時中から戦後にかけて社会経済に関する包括的なプログラムをもっていたこと、第三にそのプログラムでは普遍的な福祉国家建設のために財政・権限の十分な一定規模の自治体形成が不可欠であるとして大胆な統合が進められたこと、が確かめられた。この北欧型の地方政府が最近の「民営化」・「分権化」の潮流にどのように対応しているのかの問題では、非社民型モデル・受益者責任型への変化と葛藤が視察できた。
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