研究概要 |
(1)企業内でのヒエラルキーのデザインと技能形成、報酬制度に関するモデルを開発した。モデル分析は、ヒエラルキー組織内での職階間の技能の代替性の大小を鍵のパラメターとして、代替性の大きな内部労働市場型の企業と、代替性の小さい職業別労働市場型の2つの類型比較を中心に行なった。その結果、前者においては後者に比べて (a)昇進決定が遅い,(b)昇進が入職時の能力に比べて相対的に技能形成の実績に依存する度合いが高い,(c)キャリアの中で複数の技能を修得する従業員グループが存在する といった特徴が明らかになった。これらは、内部労働市場の発達した日本の大企業についてよく知られる特徴をうまく説明する。 (2)企業内の昇進競争に関しては、大企業5社のホワイトカラー労働者へのアンケート調査の結果を利用して、実証的に企業の人事管理システムと労働者の努力インセンティブの関係を探った。そこでは、賃金上昇をより重要視する労働者ほど努力水準は高く、(賃金上昇を重視している労働者について)昇進競争を行っていると考えられる同期の労働者間では、昇進による賃金差が大きいと考えている労働者ほど努力水準は高いという結論を得た。また、学歴が昇進の決定要素として重要である企業では労働者の努力水準が低いことも判った。これらの結果は、インセンティブ理論から導かれる仮説と整合的といえる。
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