研究概要 |
非定常な時系列、あるいは和分過程(特に次数が1の場合)に関連した過去の研究成果批判的に検討し、問題点を整理した。そして、高次の和分過程の問題に取り組む中で次数が1の場合は、次数が2以上の場合とは本質的に異なり、次数が1の場合はいわば特異点のケースであることを明らかにした。この点も含め、現在、英語による本を執筆中であり、当該問題の背後にある数学理論、すなわちブラウン運動についても統計学的観点から再考して本の中に盛り込んだ。さらに和分過程への統計理論的アプローチとして、3つのもの(eigenvalue approach,stochasticprocess approach,Fredholm approach)を考え、これら相互の関連、利点、欠点の比較分析を試みた。 高次和分過程に関連した統計量の中では、推定量、標本モーメントに関してはかなり深く研究できたと考える。他方、検定問題、およびそのための検定統計量の性質についてはさらに研究の必要がある。なお、分布を求める際に、次数が2以上の和分過程の標本2次モーメントの極限分布については、数値計算上面倒な事態が生じたが、そのための〓済方法を提案することができた。さらに、高次和分過程に関する不変性原理、あるいは汎関数中心極限定理を見通しのよい形で構築できたことも付言しておく。
|