本研究は2年間にわたるものであり、以下ではまずそれぞれの年度の研究概要を述べ、それらを踏まえて今後の展望を行いたい。 1.平成5年度 非定常性の程度が非常に強い説明変数を含むような回帰モデルとして、和分過程を考察した。特に、次数が2以上の過程から得られる種々の統計量の漸近分布を見い出し、実際に分布関数の計算を行った。その際、次数が2以上の場合には、数値計算の観点から非常にやっかいな関数を扱わねばならないが、困難を克服する方法について提案した。他方、次数が1の場合は、2以上の場合とは異なり、分布論の観点からは、いわば特異点のケースであることがわかった。 2.平成6年度 和分過程に従う非定常な変数間に共和分関係が成立しているかどうかの新しい検定方式を提案した。従来の方式は、共和分がないという帰無仮説を検定するものであったが、ここでは逆向きの方式を考え、検定統計量の帰無仮説のもとでの極限分布、および局所対立仮説のもとでの極限分布を導出し、分布の有意点を計算した。 以上のような理論的成果をもとにして、本研究期間に英語の本を書き上げることができた。今後の研究課題としては、より複雑な形の統計量の分布を扱えるような方法を考案することである。これは、正則な場合でも困難な問題であるが、何らかの糸口を見つけて行きたい。
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