今年度は、病院経営における医療サービス生産の効率性について主に分析した。具体的には、長期平均費用関数のモデルを使い規模の経済(economies of scale)が存在するかを考察した。分析対象のサンプルは、全国公私病院連盟・社団法人日本病院会『病院部門別原価計算調査報告』に記載されている全国自治体・その他公的・私的病院の各部門原価のデータである。このデータは1978、1981、1984、1987、1990年の各種病院の規模別(病床数20-99、100-299、300以上、300-499、500以上)で集計されるものである。本研究では、入院一般、集中治療(ICU)、外来一般、救急の四部門に対して比較分析をした。 実証結果は、入院一般部門、集中治療部門、外来一般部門において規模の経済がみられ、入院一般と外来一般の両部門においては統計的に有意な結果が得られた。病院適正規模の結果は、救急部門では病床数100床以下が適正であり、入院一般と外来一般の両部門においては病床数100-299床が適正であることが検証された。そして、集中治療部門においては病床数300床以上が適正規模であるという結果が得られた。四部門に共通して言えることは、注射費や他の材料費、経費(消耗品費・光熱水費・その他)などが平均費用を引き上げる要素なっている。一方、常勤・非常勤の医師や看護婦の賃金などは医療費用の比較的大きな割合を占めるのにもかかわらず、平均費用への影響は有意であると検証されなかった。生産要素需要(常勤・非常勤医師と常勤・非常勤看護婦)の分析では、集中治療部門において常勤医師と非常勤医師とに代替関係が検証された。また、非常勤医師と非常勤看護婦の間にも代替関係があるという結果が得られた。 今後(平成6・7年度)は平成5年度の研究結果を踏まえて、『地方公営企業年鑑』(平成3年4月-平成4年3月)の資料から地方自治体病院(722病院)を標本として費用分析や生産関数をする計画である。それらの資料は既にコンピュータに入力を完了している。また、米国のナーシング・ホームにいる高齢者(70才以上)の行動分析をする計画である。
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