本研究では現代中国の経済・社会に関する統計データおよび調査報告の収集・分析を主たるテーマとしている。本年度は別紙(様式6)の通り中国語、英語、および日本語にわたる図書資料を購入し、所属部局の資料室に設置するとともに、研究補助者を使い若干の解析を試みた。成果の一部は「中国の国有企業改革と政府間財政関係」と題し学術誌に投稿し、採択され、本年4月には刊行の予定である。論文の主旨は、中国の国有企業に特徴的な産業組織の分散性、企業の属地性に着目し、企業・政府間財政関係および政府間財政関係からこうした性格を歴史的にあとづけ、近年の企業改革、財政改革が地方国有企業・地方政府間の相互依存関係を根本的に改めるものでないことを論証する、というものである。中国における企業および財政の関係を内在的に説明し、企業改革、財政改革の限界を1つの一貫した論理で説明したという意味で、ユニークな論点が提示できたと考えている。 その他、本年度の本研究では、中国の研究機関が実施した国有企業800余社を対象とする経営調査の個票をデータ・ベースとして購入する予定であったが、商慣行の違いから次年度に繰り越さざるをえなくなった。このため支出計画に変更を余儀なくされたが、経済制度の違いによる摩擦を経験する機会ともなった。 なお本年度は夏に別途予算にて中国の吉林省、遼寧省で企業調査、安徽省で農村調査を行った。いずれも本研究と補完的な関係にあるため、本助成金の一部はその際に収集したデータの整理および調査報告の作成にもあてた。
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