本研究では現代中国の経済・社会に関する統計データおよび調査報告の収集・分析を主たるテーマとしている。本年度は前年度に続き中国語および英語の図書資料を購入し、所属部局の資料室に設置するとともに研究補助者を使い若干の解析を行い、成果のとりまとめにあたった。成果の一部は「中国の国有企業改革と政府間財政関係」と題し平成6年4月に公刊され、さらに著書『中国農業の構造と変動』(学術図書として文部省科学研究費研究成果公開促進費を申請中。御茶の水書房より刊行予定)、論文「中国的産業組織の形成と変容-小型トラック産業の事例分析」(『アジア経済』[アジア経済研究所]に投稿中)としてまとめられている。 このうち『中国農業の構造と変動』では、内外の研究者によって行われた中国農村調査を総括し、農法論的視点、農業構造論的視点の欠如を指摘するとともに、民国期以降今日に至る農業生産力の展開過程を統計資料からあとづけ、みずから実施した農村調査にもとづき、現段階の中国における農産物市場の変動と農業構造の変化を明らかにした。 また「中国的産業組織の形成と変容-小型トラック産業の事例分析」では、産業組織の形成過程をミクロおよびセミマクロのレベルから歴史的かつ統計的にあとづけ、改革・開放前の産業組織の分散化が市場の分割と無償の技術移転により、改革・開放期の分散化が需要の拡大と海外からの技術移転によって促進されたとし、技術移転の形態および市場構造の変化を論じた。
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