研究概要 |
本年度の研究は、所定の計画に從って、内部昇進制における生え抜き尊重の程度およびその時間的変化,職階・非職階のそれぞれに関する賃金決定要因の計量的分析,の2点について行われた。 1.内部昇進制について 1980〜90年では全体として管理職への生え抜き登用率が上昇しており、予想されるように、生え抜きのほうが非生え抜きより昇進速度が速い。また人口高齢化・団塊の世代の中高年化・経済成長率の低下の中でポスト不足が生じ、各管理階層で昇進速度の遅れがみられる。しかし子細に観察すると、(1)生え抜きのほうが非生え抜きより昇進速度が遅れている。(2)夜間大学出身の生え抜きは以前ほど不まりな扱いをされなくなっている。(3)卒業後1年間の他企業経験は昇進に不利に作用するが、近年この不利益が緩和される傾向にある。 2.企業内賃金構造の決定要因について 年次間比較を行うに至っていないが、1990年に関する分析によれば、(1)上位の管理階層におけるほど計量モデルの当てはまり(決定係数)が低くなること,(2)非職階におけると同様に職階(部長・課長・係長・職長)においても年齢要因が賃金に対して統計的に有意な影響を及ぼしていること,(3)上位管理階層におけるほど勤続年数の賃金に対する効果が小さくなること,等の諸事実が発見されている。
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