以下の4本の論文が昨年の研究実績に続く研究成果である。「管理貿易化で損なわれる変動為替レートの国際収支調整機能」は直接には世界経済の統合あるいは分裂を扱うものではないが、統合あるいは分裂が結果として保護主義的な貿易政策をもたらす場合には、変動為替レート制がその機能を発揮しなくなり、世界経済が不安定となって世界経済の発展が妨げられることを指摘している。“Japan′s Trade Policy and Regional Cooperation"は日本の貿易政策とリ-ジョナリズムとの関係の分析を行っている。日本とリ-ジョナリズムの関係が取り上げられている点にこの論文の貢献がある。日本が中心となって積極的な自由貿易政策をとることにより、アジアでの最近のリ-ジョナリズムは保護主義的な動きと結び付かないようにすることがこの論文の主張である。また、日本を含むアジアがNAFTAやEUに対抗して地域経済統合を押し進めるべきかという点も検討されている。「GATTやWTOへ」及び「世界貿易機関の課題」は1995年1月に発足した世界貿易機関が抱える課題、特に本研究との関連で言えば、最近多く見られる地域経済統合(リ-ジョナリズム)とグローバリズムとの調和、及び、貿易と環境問題の関連に目を向けている。これらの点について世界貿易機関で先進国と開発途上国との調整、妥協がうまくがはかれない場合、リ-ジョナリズムとグローバリズムが相反する形となり、世界経済の発展が妨げられうることを指摘している。
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