研究概要 |
景気観測の方法として、近年急速に米国で展開されてきている[1]時系列モデルによる転換点予測((1)VARモデルによる予測、(2)Stock=Watoson及びMTVタイプモデル(3)ベイズタイプモデル)及び、[2]確率シミュレーションに基づく短期計量経済モデルによる景気転換点の確率予測についてサーベイをおこないDI,CIを補完拡張する方法として有効であることを調査した。次いで、景気観測において重要な採用系列の時系列的特性について検討した。景気観測は、全国、地域においても試みられているのでとのような系列を採用するかは極めて重要である。試みに作成した月次GNP、現行DIに採用されている系列の原系列では非定常性の検定(Unit Root Test)を試みると幾つかの系列で非定常性が検出され、その時系列的な取り扱いが問題となることが明らかとなった。また、1992年までの月次データに基づいて、単一時系列モデル、VARモデル、及び、主成分分析に基づくMTVモデルによる景気転換点予測の試みを行なった結果、暫定的に過去の日本のレファレンスサイクルにおける転換点についての予測可能性は高いことが示された。ただ、この確率予測ではイノベーションの乱数発生のみを考慮しているにすぎなく、パラメータの変動については考慮していない点、また、実験の回数が100回程度と十分ではなく、今後シミュレーションの回数を増加させることが残されている。MTVモデでは,最近時点のように不規則変動が大きくなると、DIの転換点識別力が急速に低下するのに対して、サイクリカルな変動をかなりの程度抽出できることが明らかとなった。次年度の継続研究としてStock=Watosonタイプモデル、ベイズタイプモデル及び計量経済モデルによる確率シミュレーションによる景気の転換点予測力の比較研究を予定しておりこれらの成果を「統計的景気変動分析」(牧野書店)として発表する予定である。
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