先進諸国による一方的な温室効果ガスの削減を主要内容とする気候変動枠組み条約の発効を受けて、わが国が直面する地球環境政策が実効性をもつためには、次のような要件があげられる。地球環境対策が広範な経済活動に大きな影響をあたえるものであるために、活動主体に環境負荷活動を抑制するインセンティブをあたえる手段であること。環境負荷の小さい産業構造やライフスタイルへの変化を、最小のコストで実現できるような超長期的視野に立つこと。将来の科学的知見の変化に対応できるような柔軟性をもつこと。地球温暖化対策の国際協調に開発途上国の参加を促す方向性をもつこと。トータルエネルギー・システムの構築を促進するインセンティブをもつことがそれである。 本研究ではつぎに、環境税の概念分類を行い、各国において環境税率がどのような形で決定されるかについて、公共選択分析を行った。さらにOECD諸国の環境関連データおよび政治経済関連データを用いて、統計的な実証分析を行った。それによれば、税収の最大化をめざすリヴァイアサン型政府を前提にすれば、環境税率は、国民1人当たりのGDPが大きくなるほど、限界生産費用が低くなるほど、需要弾力性が低くなるほど高くなる。一方、環境税の賦課に利害関係を持つ主体のうち、特に需要者側は、価格弾力が低いほど政治抵抗が強まる。さらに、環境政党の存在は環境税率を引き上げる。 ついで、わが国におけるエネルギー消費動向と環境関連税制を地球環境政策の観点から検討し、最後に、トータルエネルギー・システム構築のためのインセンティブシステムとして、環境税制改革の提案を検討した。
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