昨年度は、アジア経済研究所が公表する1975年と1985年の多国間国際産業連関表をインドネシア-日本-アジア5ヶ国+アメリカの2国・1地域間表に組み替えて、インドネシアにたいする1975-85の成長要因分析を行った。今年度については、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、韓国およびアメリカに分析対象を広げインドネシアと同様な分析を行った。今のところ実質値ではなく名目値を用いた分析であるが、国際産業連関表を用いることにより日本やその他諸国との相互依存関係に基づいてもたらされる成長部分も整合的なフレームワークのなかで分析ができるようになった。まず、他国との相互依存関係の強いシンガポールでは、1975年から85年までの10年間で年率13.0%の成長(名目)を全体として記録したが、総成長額の約65%は他国との取引関係によりもたらされた。しかし、日本との相互依存関係による成長はそれほど大きくはなく、日本が成長することによってもたらされる地域間乗数効果による間接的な成長にシンガポール財への需要増による直接的な成長を加えても総名目成長額の3.8%にずぎなかった。一方、ASEAN諸国のなかでは最も高い名目成長率を記録したマレーシアでは(年率15.8%)日本との直接的な取引増による成長部分が大きく、間接効果を加えると総成長額の9%が日本との相互依存関係によりもたらされた。次に、1975-85の期間のフィリピンの名目成長率は、ASEAN諸国のなかでは最も低い6.8%であった。マレーシア、シンガポールと比べると、自国内の要因による成長部分が大きく、総名目成長額の約74%がこの要因によりもたらされた。ただ、日本が成長することによりもたらされる間接的な成長部分は全体の4.3%で、ASEANのなかではインドネシア(5.9%)に次ぐ大きい値を示している。
|