研究概要 |
平成6年度の研究実績としては,アントウェルペン市場が,16世紀の末年以降次第に衰退していくなかで,周囲の地域,国々,とりわけオランダとイギリスにおいて国民経済が形成されていくプロセスを意味づける研究を新たな研究動向を示す研究成果を踏まえつつ行い,これを研究ノートにまとめた。また,同時に,16世紀のヨーロッパ経済において,アントウェルペン市場が持った意義をその市場そのものに則した分析研究という従来の方法から脱却して,ヨーロッパ経済の一体的構造を復元し,その特質を検討した上で,新たにその一体的なあり方を有した経済が次第にその枠組みを崩し崩壊していくプロセスを明らかにしてきている。 アントウェルペン市場は,16世紀の繁栄する大きなヨーロッパ経済の中核中心都市市場として位置づけられる一方で,ケルン,フランクフルト・アム・マイン,ハンブルク,ダンツィヒといった内陸都市市場と連携し,イギリス毛織物の交易ルートを軸として広範な交易ネットワークの頂点にあったといえる,こうした交易ネットワークを解明することを通じて,特定の国家や都市,地域ではない,すぐれてヨーロッパ的な経済のあり方を明らかにすることは,近現代ヨーロッパの特質を考察する上で不可欠,かつ重要な作業と言える。 本研究では,上記の問題意識を持って,16世紀ヨーロッパ経済についての一体的構造を解明することが出来た。
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