1.農林官僚論の歴史的研究・・・第一線のポリシィー・メーカーとして戦前・戦後を生き抜いた農林官僚東畑四郎を取り上げ、その目を通して、戦後日本農業システムの歴史的形成と構造的特徴を検証し、農地改革の歴史的意義や日本農業存立の展望について考察を行った。これは「戦時体制・戦後史の中の石黒農政の流れ」の見通しという観点からの農林官僚の歴史的研究である。 2.戦後高度成長期論の考察・・・戦後日本形成期の国家と農民の関係の考察にとって高度成長の歴史的意味の解明が重要な意味を持つが、家族農業経営と農村女性の自立に焦点をあて戦後高度成長の歴史的意味を明らかにした。この点では、(1)ジェンダー視点から家族農業経営と農村女性の自立について理論的に考察するとともに、農村女性自立のための政府の政策の国際比較を行った。(2)地域の生活改善運動を事例に、地域の経済変動と農村女性の自立のありようを明らかにした。 その他・・・今後研究を発展させるため、特に戦後改革期以降の農業・農村・農政に関する各事項に重点をおいて、日本の経済・社会・政治一般の動きとの関連で年表に整理する作業を行い、公表した。また、関連する研究について意識的に書評を行い、研究の現状と問題点を把握するように努めた。 4.3年間の研究によって関連資料の収集あるいはヒアリングは相当多く行うことができた。今後これらの資料を活用して研究の取り纏めを積極的に行って行く予定である。当面の課題として、政府と農民という観点から戦後農村社会を歴史的に研究する課題と方法に関する試論的覚書と1950〜60年の時期について、財政構造をふまえた農業政策史の取り纏めを行いたい。
|