本研究は、1937年の日華事変を契機に本格化した戦時石油統制策と、そのもとで進められた戦時下の石油業の再編過程を、欧米の主要交戦国との比較において、総合的に研究することを目的とした。研究の重点は、【.encircled1.】戦時下における採掘・精製・販売の各部門の企業展開を具体的に明らかにすること、【.encircled2.】戦時下の石油企業の再編成と石油専売制実施・石油統制会の結成に至る石油統制政策の諸特徴を解明すること、に置いた。 本来3ケ年計画で進めていた本研究では、前年来の作業であるアメリカ戦略爆撃調査団(USSBS)報告の太平洋戦線の部Reports 51、52(Oil in Japan's War)の複写と翻訳に加え、本年はヨーロッパ戦線の部の最終報告書から石油業関係の部分の複写・翻訳作業に着手し、諸報告の翻訳を終わる見通しをつけつつある。この翻訳・分析と並行して日本語文献によって史実のノートに努め、本年度は特に次の課題を深めた。 【.encircled1.】 1942年頃の国内精製会社8ブロックの編成と8社の各経営内容、および瀬戸内に精製施設をもち9社目の会社として戦時下を通じて営業を続けた太陽石油(株)の陸・海軍指定関係等を追跡、採掘部門=帝国石油(株)と石油精製8ブロック編成という国内の分業体制の実相を究明した。 【.encircled2.】 さらに、1940年から47年にかけての石油配給機構の変遷を分析し、43年6月の石油専売法制定以後の陸海軍の燃料補給ルート並びに、燃料局・石油配給統制会社-府県石配-配給所といった配給ルートと価格、地域の石油業者の統廃合の実相などを究明。あわせてこの作業のなかで、戦後再編後の石油販売組合においても石油末端価格の協定等「統制色」の強い組織として高度成長期まで存続したことも明かとなった。なお、販売統制機構、人造石油製造などドイツ・イタリアとの比較において、日本の戦時石油統制の特徴を明らかにする作業は、早期に達成したい。
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