本年度は、韓国・台湾の地方財政に関する基礎的資料の収集、および両国の地方行財政制度の歴史と基本的仕組みの特徴について把握することにつとめ、また必要に応じて関係者へのヒアリングなどもおこなった。その結果、以下のような両国に共通する特徴が明らかとなった。 第一に、自治の基礎単位が、わが国の市町村にあたる自治体にはないことである。韓国は郡・特別市、台湾は県・特別市が基礎的自治体となっていた。また、両国の首都であるソウル・台北市は、いずれも中央政府直轄市として、首長が任命制であったり、特別な財源が付与されるなど、他の市とは異なった位置づけがなされている。第二に、国が所得税など有力な財源を独占していながら、わが国の地方交付税や国庫支出金のような財政調整には、国家財政のわずかしか割かれておらず、そのため純歳出額でみると、国家財政が地方財政に対して圧倒的な大きさを示していることである。第三に、政治の民主化の一環として、これまでまったく形骸化していた地方自治の充実、とりわけ地方財政基盤の強化が内政の重要な課題となっていることである。こうした共通点の反面、税源配分における両国の相違が明らかとなった。すなわち台湾では、国は所得課税、省は付加価値税、県は不動産関連税を中心とした税源配分であるのに対し、韓国では、国は所得課税と付加価値税、道は不動産流通税、郡は住民税と不動産保有税を中心とした税源配分となっているのである。 以上の成果を踏まえて、94年度は、両国の税源配分・財政調整の仕組みの形成過程、地方財政改革の動向に着目して、その共通点と相違点を摘出し、わが国との比較もおこないながら、政府間財政関係における東アジア型が成立するかどうかについて考察をすすめることとする。
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