韓国・台湾の政府間財政関係の共通する特徴として、以下のような点が検出された。第一に、自治の基礎単位が、わが国の市町村にあたる自治体にはないことである。韓国は郡・特別市、台湾は県・特別市が基礎的自治体となっていた。また、両国の首都であるソウル・台北市はいずれも、中央政府直轄市として特別な位置づけがなされている。第二に、国が所得税など有力な財源を独占していながら、わが国の地方交付税や国庫支出金のような財政調整には、国家財政のわずかしか割かれておらず、そのため純歳出額でみると、国家財政が地方財政に対して圧倒的な大きさを示していることである。第三に、政治の民主化の一環として、これまでまったく形骸化していた地方自治の充実、とりわけ地方財政基盤の強化が内政の重要な課題となっていることである。 さらに、わが国も含めた三国の国際比較をおこなうことで、以下の相違点が検出された。第一は、国税・地方税を合わせた全税収にしめる地方税の比重が、韓国がわずか2割しかなく、最も低いことである。これはまた、三国の地方税構造の相違の反映でもある。すなわち、わが国は所得課税中心であり、台湾は、付加価値税である営業税と譲渡所得税である土地増値税がすべて地方税であるのに対し、韓国は所得課税と付加価値税のほとんどすべてを国が独占しているのである。第二は、韓国には、わが国ほど大規模ではないが、わが国の地方交付税・国庫支出金と類似の地方財政調整制度が存在するのに対し、台湾では、国による地方への財源の再配分がほとんどおこなわれていないことである。第三は、近年の民主化過程における地方財政規模の拡大が韓国においてとくに顕著なことである。しかしそれは、抜本的な財政改革の結果によるものではなく、日本・台湾ではそれほど大きな比重を占めていない、たばこ消費税、取得税、登録税などの地方税収の伸びに支えられたものであった。
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