(1)従来の財政連邦主義における政府間財政関係論のサーベイを行い、あわせてこれに関連する国内で刊行された図書を購入した。とくに、中央地方の税源分離に関するRichard A.Musgraveの所論とこれをめぐる論争、E.M.Gramlich等のフライペーパー効果に関する議論を中心に検討したが、日本のデータをもちいた実証分析にまでは至らなかった。この点に関しては最終年度の課題としたい。 (2)国際比較に必要な統計をデータベース化するために、パーソナルコンピューターを購入し、研究補助者の援助を得た。初年度は、Revenue Statistics of OECD CountriesおよびNational Accountsをもちいて、地方歳出、地方税、地方債、補助金、交付金の各項目について、日本、イギリス、アメリカ、ドイツ毎に、長期趨勢を把握することができた。最終年度は、イギリスのH.M.S.O.(政府刊行物出版)ならびにアメリカのA.C.I.R.(政府間財政関係諮問委員会)で発行された資料を収集し、よりきめ細かいデータにブレイクダウンしたい。 (3)『地方財政統計年報』等のデータを用いて、日本の政府間財政関係の現状に関して分析を行い、その一部を「平成不況と地方財政の分権化」(地方自治職員研修)に発表した。その中では、近年の地方財政の悪化がバブルの崩壊や信用不安という一時的な外生的ショックによるものというよりも、中長期的な経済成長の低下をともなう構造的な要因よるところが大きく、したがって交付税の年度間調整と財源対策債の発行という従来型の対策ではなく、地方税財政システムの再構築が必要であると論じた。
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