政府間財政関係の国際比較-財政連邦主義の再検討-

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05630055
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 持田 信樹 東京大学, 経済学部, 助教授 (20157829)
• キーワード: 政府間財政関係 / 財政調整制度 / 地方税 / 補助金 / 地方債 / 公共財 / 所得再分配 / 地方分権

研究概要

(1)地方自治体を対象として、地方税財政制度に関するアンケート調査を行なった。対象は、首都圏の約270の都府県及び市町村で、回収率は約4割であった。地方分権の必要性や具体的要望は、団体の規模や財政力によって差があること、地方消費税については現行の消費譲与税に比べると歓迎されているものの、大都市に税源が偏在するのではないかとの懸念を多くの団体がもっていること等おおくの実態が明らかになった。
(2)アメリカの政府間関係諮問委員会(ACIR)および会計検査院(GAO)の財政資料を収集し、その分析を開始した。地方小売売上税(Local Sales Tax)に関するACIRの分析と勧告は、日本の地方消費税問題を検討するうえで、示唆に富むものであることが明らかになった。とくに「非居住者による只乗り(フリー・ライダー)に対する課税」という論点をめぐり多様な研究と意見の或ることが判明した。
(3)東京都の財政をケース・スタディとして、地方財政調整制度における主要な負担者となっている大都市の財政システムの実態を研究し、論文を作成した。このため主要な図書館に存在する資料を収集するとともに、実際に財務局の中枢にいた人々からヒアリングをおこない、事実の発掘をおこなった。この結果、大都市は法人二税のウェートが大きく景気にふられやすい弱点があることなどが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] 持田信樹: "平成不況と地方財政の分権化" 地方自治職員研修. 94年3月号. 18-26 (1994)
• [文献書誌] 持田信樹: "中央・地方政府間の税源配分" 『現代の財政と税性』文眞堂. 論文集. 204-215 (1994)
• [文献書誌] 持田信樹: "分権的財政システムと地方公共財" 『地方財政』地方財務協会. 94年10月号. 4-9 (1994)
• [文献書誌] 持田信樹: "地方分権の視点(下)" 「日本経済新聞」経済教室. 12月7日付27面. 27 (1994)
• [文献書誌] 持田信樹: "日本の財政改革" 河村・柴田編『変貌する現代世界経済システム』東洋経済. 論文集(近刊). (1995)
• [文献書誌] 持田信樹: "戦後における東京都財政の変遷" 神野編『都市を経営する』都市出版社. 4巻(近刊). (1995)
• [文献書誌] 持田信樹: "都市財政の研究" 東京大学出版会, 324 (1993)
• [文献書誌] 佐藤進,林健久編: "地方財政読本(第6章,第9章担当)" 東洋経済新報社, 260 (1994)