第1に政府間財政関係論の近年における展開をサーベイした。中央地方の機能配分についてはW.Oatesの所説を、税源配分についてはR.Musgraveの所説を中心に検討した。その結果、地方政府の財源は不動産課税中心とし、その機能は地方公共財の提供に限定するという伝統的財政連邦主義(traditional fiscal federalism)の主張は依然として一定の影響力があることが確認された。同時にこの理論の根底にあるティボ-の「足による投票」についての理論動向を検討した。 第2にOECD、イギリスのH.M.S.O(政府刊行物出版)、アメリカのA.C.I.R(政府間関係諮問委員会)等の財政統計を収集し、日本・米国・英国等の地方財政の国際比較を行なった。その結果、地方財政は広義の社会費のうち非貨幣的給付に関わる対人サービスを中心に膨張していること、経済安定化機能に地方財政が関わるケースが増大していること、地方税における不動産課税の割合が停滞し、消費課税や所得課税への依存を高めていることなどが明らかとなった。これは古典的な「財政連邦主義」が福祉国家の成熟とともに、しだいにその現実的妥当性を失ってきていることを示す。 第3に日本の政府間財政関係の現状分析を行なった。交付税の年度間調整と財源対策債の発行という従来型の地方財政対策が限界にちかづいていることが、首都圏の約270の都府県及び市町村を対象としたアンケート調査によって明らかになった。また東京都の財政をケーススタディとして、地方財政調整制度の負担者である大都市財政の分析を行なった。この結果、大都市は法人二税のウェートが大きく、景気変動に敏感な脆弱性のあることが明らかとなった。
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