研究概要 |
本研究の目的の一つは、金融・銀行システムの安定性および効率性に関する理論的分析を発展させ、それらを日本の場合に適応させることである。もう一つは、そうした金融システムの安定性がマクロ経済変動とどのように関連するかという貨幣的・金融的景気循環理論を検討することである。最初のトピックに関しては次のような結果を得た。不完全情報の下での金融市場における競争的均衡とそこでの資金分配の効率性について理論的に考察し、均衡の複数性と非効率性があるということを導いた。それを労働市場における均衡と比較することによって、類似性が指摘された。(「不完全情報と市場均衡:労働市場と金融市場」早稲田政治経済学雑誌,322号、近刊。)まだ“The Stability of the Japanese Banking System:A Historical Perspective"(JJIE,1993)を拡張し、銀行行動の理論を明示した論文「日本の銀行制度の安定性:歴史的展望」(成城大学経済研究所年報,1994年)をまとめた。第2のトピックに関しては,これまでの景気循環における金融的要因に関する研究をサーベイし,また負債デフレを明示的に導入したマクロモデルにおいて銀行システムの安定性がマクロ経済に及ぼす効果の重要性を数値計算で示した。それは「経済変動,金融システムの不安定性とデフレ効果」(金融構造研究,17号近刊)にまとめた。
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