初年度の平成5年度は、わが国の船舶管理会社を直接訪問し、会社設立の目的、管理業務の内容、管理船舶の隻数・船種・船型・企業業績(収益性)、将来計画等について実態調査を行った。一方、船舶管理会社の顧客の立場に立つ船主及び裸用船者がどんな理由なりメリットを期待して船舶管理業務を委託しているかについて、国内各地域の外航船主及び用船者に面接調査した。この初年度の調査結果に基づくかぎり、わが国の船舶管理業界は国内船主が所有支配する海外置籍船(便宜置籍船)と少数の日本籍船を需要源とし、それも大部分親会社またはグループ内船主をもっぱら顧客とし、第三者の船舶管理経験を持たない「インハウス」の管理会社(子会社)とオーナー主力船主が兼業として行う系列の管理会社でほとんどを構成されている。第三者の船舶管理を経営基盤とする「独立」の管理会社はきわめて少数であり、しかもこれら独立管理会社はもっぱら特定の国内船主が所有支配するわずかな外国籍船(便宜置籍船)と新マルシップ混乗船を管理する小規模経営にとどまり、真正の外国船主から管理需要を得ている事例は1〜2の例外を除いてほとんどない。したがって、わが国の大手船舶管理企業がインハウス管理会社を有しまた系列のオーナー主力船主の多くが船舶管理業を兼営していることから、船舶管理業界は国内の第三者船主から管理需要を確保する余地は少ない。また、真正の外国船主の所有支配する船舶の管理経験がまったくないかまたはあってもきわめて乏しいことから、現段階では国際市場で管理需要を獲得できる状況にない。このため、今直ちに第三者の船舶管理、なかんずく国際管理市場に進出することを考えている管理会社はきわめて少なく、わずかな管理会社のみが将来国際水準の管理能力と競争力を持てるようになった段階で名実ともに独立の管理会社として自立を目指しているにすぎないことが明らかにされた。
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