2年目の平成6年度は、より十分な分析データを収集するために、前年度の実態調査を補う形で、我が国船舶管理会社に対して会社設立の目的、管理業務の内容、管理船舶の隻数・船種・船型、企業業種(採算性)、将来計画等についてヒアリング調査する一方、船舶管理会社の顧客の立場に立つ船主および裸用船者がどんな理由なりメリットを期待して船舶管理業者を委託しているかについて、国内各地域の外航船主と裸用船者に面接調査した。本年度は一部の内航船主も調査対象に含めた。この本年度の調査結果によって、世界的に船舶管理市場の競争が厳しくなっているところへ、1993年10月に国際海事機関(IMO)によって海難事故防止対策として採択された本船の安全管理のみならず、これを支援する陸上部門の管理体制も含めた包括的な安全管理体制の確立を狙った「ISMコード」が船舶管理会社にも適用されるため、このISMコードの定める要件を満たしていることを自国の船級協会によって認められ、これを証明する「安全管理システム適合証書」を取得していなければ、顧客の船主および裸用船者から信頼を受けて船舶管理契約を取り付けるのが次第に難しくなりつつあることが明らかになった。このため、我が国の船舶管理会社は現在「安全管理システム適合証書」を取得すべく、安全管理体制の整備向上に努力しているところであるが、このISMコード要件を満たし得ない一部の中小管理会社は不利な競争地位に置かれ、今後生存していくのが難しくなると見込まれる。この結果、立ち後れにより国際競争力において劣勢にある我が国の船舶管理業界は、この国際安全管理基準の実施によって一層厳しい状況に立たされることになった。
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