研究概要 |
本年度の研究は,ジャストインタイム物流システムの合理化効果の計測のための理論モデルの開発と実際的な効果計測をねらいとした。 まず前者においては,在庫理論モデルをもとに合理化効果計測のためのモデル開発を行った。従来の在庫モデルでは各種の条件下での最適在庫量の求解が主眼であったが,ここでは合理化効果計測のための理論展開として,合理化による効果を(1)在庫量削減効果,(2)在庫時間短縮効果(時間資源節約効果),そして(3)在庫管理費用の3つにわけ,それぞれ具体的に分離明示化して記述した。これにより,各種の効果を議論できることとなった。とくに多品種化の動向が物流に及ぼす影響効果なども明らかにできることとなった。結果的には,多品種化はあきらかに手持ち在庫量を増やす要因になる。したがって,従来にもまして物流の合理化が求められると言う逆説的な結果をもたらす。 後者においては,具体的に神戸市郊外内陸部のの木見地区を対象にして,市内に散在する物流施設を当該地区の物流センターに集約した場合の効果について試算してみた。この場合には在庫に関する効果は当初の予想通りであったが,市内に散在する需要地に輸送する距離や時間がかえって増大するため,すべての面でプラスの効果ばかりとはいかないことも明らかとなった。反面,神戸市臨海部や中心部での物流センター立地には,社会性の面で問題があるものの効果は極めて大きい。今後は,環境面など社会性にも配慮した総合的な効果計測モデルへ発展させる必要がある。
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