新しい企業を設立する企業家は、多くの他の組織や個人との間でネットワークを形成しようとするといわれている。これは、不足している経営資源を確保するという直接的な目的だけで行われているのではない。他者との交流の過程で、相互のアイデアの精緻化・具体化、知識の相互交流・相互利用、そして新たな知識の創造を目指す共同イノベーション活動と考えられるものでもある。 また、そのネットワーキング活動は既存のネットワークを破壊し、代替し既存の産業に新たな息吹を与える。さらに、新産業分野(バイオテクノロジー、エレクトロニクス、ソフトウェア等)の創造にも寄与する。すなわち、企業家を支援することは、ただ単に特定の個人を支援するという短絡的な考え方ではなく、地域全体の産業を活性化させたり、転換させる大きな力になると考えられる。 日本においては、企業家活動を支援する枠組みは、既存の中小企業の支援に比して少ない。しかし、近年上記の新産業分野を中心にして、新規企業を育成するインキュベーションが各地域で見られるようになり、企業家支援のメカニズムが出来上がりつつある。そこで、リサーチ・コア等で実行されているインキュベーション活動(起業化)の実態を調査するため数地域を訪問した。スタートしたばかりの地域が多いため、まだ新たな企業が形成されたという実績はほとんどないに等しかった。第二に、既存の中小企業を中心にした交流会・研究会は多数行われていた。このように既存の中小企業に対する支援がある程度充実している一方、依然としてインキュベータ自体においても新しい産業分野や新規企業への支援は少ない。この支援を実行性あるものにするために、いかなる方法やメカニズムが有効かをさらに探る必要がある。
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