1.計画通り、『社債一覧』、『全国公社債明細書』を基礎資料として戦前期社債市場におけるデフォルト事例の検出の第1次調査を完了した。コンピューター入力用の基礎調査表の作成も終えたが、入力作業は平成6年度の前半までかかる見通しである。 2.上記以外の社債償還基礎資料として藤本ビルブローカー銀行『公社債発行償還調』、鴻池信託『公債と社債』等について、大分大学経済研究所等への出張調査を行い、基礎資料間のデーターの正誤の確認も行った。デフォルト企業の旧所在地の確認等の現地調査も京阪神地区を中心に実施した。 3.わが国の戦前期のデフォルト社債の統計的資料と言えそうなものは『社債一覧』だけであるが、同資料に記載されているデフォルト事例は、全デフォルトの60%程度にとどまることが、本研究調査によって判明した(本年度2月末の時点)。 4.研究の現段階で新たに認められた事実は、デフォルトか否かのボーダーライン上にある企業が相当数存在すること、および受託銀行の倒産やグループ親会社の倒産にともなう連鎖型のデフォルトの事例が昭和初期に見られる点である。これらの事例は、その他の個別独立のデフォルト事例とは、分析上、区別することも必要かもしれない。長期的には、デフォルト事例だけでなく、戦前期の社債の全事例と発行企業の財務データーとを統合したデータベースを作成する必要がある。
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