米国貯蓄貸付組合(S&LS)における合併効果の実証的研究の先駆的研究は、1978年のJournal of Business誌上のW.D.Bradfordの研究である。合併貯蓄組合対非合併貯蓄組合の財務特性を合併前後年数別の比較により、合併効果は中立であるとされている。 本研究では、1986年より1992年までのOTS(Office of Thrift Supervision)が作成、NTIS(National Technical Information Service)が実費提供している貯蓄組合の財務データと、合併、解散、撤退のリストを磁気テープ8本で入手した。しかし、DEC方式のデータ入力であり、大学のコンピューターACOSでの分析に大変手間取っている。分析対照は1989年に合併した組合179組合を標本として、合併前後3年での分析を行う。合併前後の比較をするため、安全性指標として、総資産自己資本比率、延滞貸付金比率、純不良貸付金比率、収益性指標としては総資産純利益率、費用性指標としては営業費用対総収益、組合員勘定関連としては借入金対組合員勘定、貸付金対組合員勘定、生産性指標としては常勤従業員1人当たり総収益、営業費用、組合員1人当たり貸付金、預金高を選択している。これらの指標で合併貯蓄組合の合併前後での比較を行い、両グループ間に、平均値の差の検定を行い、統計的に有意な差があるかどうかを検定している。ペアとしての非合併組合も同様の比較を行い、合併期前後でのグループの差の検定を行う。両者の結果の異同より合併効果を識別する。
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