本研究は、1990年代に突入し、これまで日本経済を主導してきた電子メーカーが、国内的、国際的に大きく活動形態を変容させている実態を解明しようとしたものである。電子メーカーは、どの国でも戦略的位置が与えられているが、ダウンサイジングに代表されるような技術的変化や産業再編成に直面している。また、こうした状況下で国際的な共同開発、国際的戦略提携等を本格化しつつある。さらに、円高下で国内の地域展開や海外進出も大きく変化している。加えて、アメリカ・メーカーの再生があり、国際的なシェア競争にも変化が認められる。 このような電子メーカー、特に、半導体メーカーの動態を解明するために、実態調査、ヒヤリング調査の実施と統計、文献収集を軸とした研究を推進してきた。前年度に続き、本年度は、実態調査としては、三重県四日市市(富士通)、宮城県(沖電気、富士通)、福岡県(三菱電機)、熊本県(日本電気)を選び、企業調査を実施してきた。上記、企業調査において次の事項を確認してきた。 第一は、半導体メーカーが相対的に良好であるが、それでも論理回路分野でのアメリカの先行と韓国等の台頭にはばまれ、厳しい対応をせまられていることである。 第二は、こうした状況下で、どのメーカーも生産のレベルを一段と上昇させていることである。特に、ICの場合には、4MDRAMから16MDRAMへのシフトが推進されているだけでなく、高付加価値製品の開発が指向されている。 第三に、東芝では国内が重視されているが、多くのメーカーでは、海外生産を一層拡充させていることがある。近年、大規模な海外での半導体工場の建設が具体化している。半導体メーカーの国際分業が進展しているのである。 以上、本年度の調査においても、半導体メーカーの新しい動向が確認出来た。
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