需要には変動があるのが普通である。個別受注作業型の企業では、緩衝用在庫を持てないため、需要変動の影響をダイレクトに受ける。そのため放っておくと、作業稼働時間の変動がきわめて大きくなり、残業や遊休が交互に発生することになる。作業稼働時間の変動を小さくする手段の1つは、客の希望する納期を延期または早めてもらうことである。本研究では、引き合い時点において、受注残が多くて、客の希望する納期に間に合わないようであれば、客に交渉して客の希望する納期をもっと先にしてもらうようにする。逆に受注残が少なくて、客の希望する納期よりも早く作業を完了できるようであれば、客に交渉して客の希望する納期よりも早くしてもらうというモデルを設定した。そして、納期を前後にずらすことによって、作業稼働時間の変動がどの程度減少するか、また遊休率及び客の退去率がどの程度減少するかをつぎのような手順で定量的に明らかにした。 1.個別受注作業型企業の需要(量と納期)を確率モデルとして定式化した。 2.需要-処理-受注残の関係を表す構造モデルを作成した。 3.納期をずらすルールをモデル化した。モデルとしては、一律に一定時間ずらすモデルや、そのジョブの作業処理時間に比例した時間ぶんずらすモデルなどとした。 4.上で得られたモデルについて、コンピュータによる数値計算を行った結果、(1)作業稼働率は高くなるが、負荷率が高いと、稼働率はそれほど向上しない。(2)遊休率も十分低くなるが、これも作業稼働率と同様に、負荷率が高い状態では、それほど向上しない。(3)退去率は、客の行動原理に左右されるので、モデルによってかなり異なる、ことなどが明らかになった。
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