研究概要 |
平成5年度・一般研究Cの研究成果報告書 平成5年度においては、まず、アメリカ企業にみられる自社株式取得の実態資料の収集と、それに基づく実態調査研究に取り組んだ。最近のアメリカ企業行動で注意をひく点は、ダッチ・オークションによる自社株式取得である。この問題に関するわれわれの実証的研究は、「アメリカおけるダッチ・オークション(Dutch Auction)の展開とその意義」(「企業会計」Vo1.46,【double half arrows】)でまとめている。この方向での実証研究は、さらに、平成6年度において、いくつかのバリェーションをもって展開される予 実証研究によって、明らかになった株主の応募入札価格の差異は、MM理論の圧倒的影響下にある、現代企業財務論研究のなかで、より現実的な企業財務の実践理論ないし現実論理を構築しようとする、われわれにとって、理論展開の重要なてががりとなろう。それは、前述の実証研究論文においても、暗示的に提示しておいた。この論理的方面に関する研究は、平成6年度の主要な研究課題となろう。 わが国における自社株式取得の法的規制緩和に関しては、法務省民事局が中心になって、「各界意見の聴取」がなされた。各界の意見は公表されたが、その様な見解が纏められるに至った経緯について、数回にわたりそれぞれの団体関係者から直接に意見をきく努力をした。近く法制化される、わが国の自社株式取得制度は、各界の意見を集約して、基本的には原則禁止を貫き、規制緩和は極めて限定的である。また、税制その他の制度的条件も整っていない。これらをどのように評価するかは、研究の総括段階の課題としたい。
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