研究概要 |
平成5年度は,本研究の第一の目的である監査判断形成の理論的な枠組みの解明と判断形成モデルの形成を行い,第二の目的である実証的分析についてはその準備作業を行うことを課題としていた。そのため次のような手順にしたがって研究を進め、次の1から3の作業をほぼ終了し、現在4の課題にとりかかっているところである。 1.会計監査における監査判断の形成に関する,わが国および諸外国の文献の収集。 2.それらの文献を用いて,三つのアプローチ毎に監査判断形成のプロセスの解明を行う。 3.2.の成果をまとめ,監査における判断形成モデルないし心証形成モデルの構築を試み,理論的な枠組みについての試案を作成する。 4.この理論的な枠組みについてのモデルから,現実の監査判断形成プロセスの理論的な枠組みの解明と判断形成モデルの構築のために、実態調査の対象となる内容を探求し,質問票の作成を行うとともに,アンケート調査を主体とした調査結果をデータベース化するための作業表の作成などの準備を行う。 新たに得られた知見としては、監査判断がさまざまな監査の局面において異なった形態で現れるため、心証形成上これらを区別して扱うべきこと、また、心証形成プロセスにおいては、判断は三段論法による推論過程を経て形成され、証拠の収集は、小前提の収集過程に対応し、要証命題はそれらの小前提からの帰納的な推論によって証明されていくこと、および、監査意見の形成は、要証命題の統合化のプロセスであり、ベイズの定理の応用によって客観化の可能性が十分認められることなど、これまで解明されていなかった点が具体的な監査判断に照らして明らかとなったことをあげることができる。
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